おむすびゴロリン
とっても静かでおごそかな雰囲気のビルで、ひとり、長い昇りエスカレーターに乗ってボケーっとしていた。
すると、ふいにケータイ電話がバイブしたので、あわててカバンから取り出そうとしたら
ゴンッ!!
落 と し た。
昇りのエスカレーターでケータイを落とした。
ガンッゴロッゴンッゴンッゴッ!
(あ、あ、あ、あ、あ。)
ゴツッガツッガッゴッゴッゴガゴガゴガゴガ!!
(ああああああああああああああああああああ!!)
面白いほど転がり落ちていくケータイ。それとは反対に一貫して昇りゆくエスカレーター。
どこまでも止まらないケータイを見て、焦って半狂乱になるワタシ。なんとか追いかけようとステップを降りてみるのだけど、無情にもというか当たり前というかステップはワタシの意志とは反対に依然昇りゆくことをやめようとせず、一段降りては一段上昇。一段降りては一段上昇のいたちごっこ。こうして、いつまでもいつまでも追いつけなくて道化師のようにその場でジタバタしていたら、
エスカレーターの下を通りかかった老年の女性が
ガコンゴロゴンッ!とビル中に響き渡るかのようにエコーしながら鳴り止まない激しい音(と必死の形相のわたし)に驚いて
「ヒィッ」と、か細い悲鳴をあげなあがら逃げてゆくのがわかった。
ケータイ ころりん すっとんとん・・・
おばあさん ころりん すっとんとん・・・
顔を上げられませんでした。