スッチー・ショック

usakima2003-10-20

以前、仕事の一環で海外に行く機会があった。
くぅは「うわぁいラッキー!」と物見遊山もいいトコ気分だ。

搭乗すると、そこには「ニコリ」と微笑みながら巡回しているスッチーたちが。ああ、今日の笑顔もステキだよ、スッチー。

さて、飛行機に乗ってしばらくすると、早めの昼食が出た。食べるのが人一倍遅いくぅは、のらりくらりと箸を進めていく。(ちなみに本人はハイスピード感覚)しかし半分も食べ終えないうちに食器の回収が始まってしまった。「また居残り組か」そう思いながらも、出された飯は平らげるのじゃ、と意気込むくぅ。

「お下げしましょうか」ニコリと微笑むスッチーを横目に、くぅは口一杯にシチューを頬張りながら
「むぐむぐ(まだけっこうです)」と返事をした。

しばらくすると、他の客たちはお腹も一杯になったせいか、ひとり、またひとりと眠りにつきはじめる。機内は静かだ。平穏なフライトが続いている。そうして、ひと仕事終えたスッチーたちは、客室との間にカーテンを貼り、乗務員室へ下がっていった。

さて、消えていくスッチーたちを見て、ひとりだけ焦っている客がいた。
「食べ終わったら食器ってどうしたらいいわけ?」
そう。それはまだひとりモグモグと飯を食っていたくぅである。

スッチーいねぇなぁ。でもずっと食器持ってるのもなぁ。食べ終えたくぅは迷った挙句、カーテンの向こうにいるスッチーさんに食器を返しに行くことにした。

カーテンの前で深呼吸して心を落ち着かせる。今さら食器を下げることがちょっと気恥ずかしい。しかし、ここまで来て引き下がっては女じゃない(?)。意を決してカーテンを開ける。

シャッ

「すみません、食器どうしたらいいですか?」
直立不動で声をかけたくぅの前には、
「…むぐ…?」
口一杯にシチューを頬張っているスッチーがいた。

あ…。
しまった。すごい気まずい。気まずいぞ、くぅ。
スッチーさんはお食事中だった。そりゃそうだ。だからこそのカーテンだ。
うろたえるくぅ。もぐもぐするスッチー。
迷うくぅ。まだもぐもぐするスッチー。
ええい!ラチあかねぇ。
「あの!食器はどうしたらいいですかッ!?」

(静寂)

スッチー「むぐ」
くぅ「…は?」

「むぅぐ!(あっち!)」(` 3′)"
顎で場所を差すスチュワーデス↑

ド───Σ(゜Д゜;)───ン!!

顎で顎で顎で顎であごであごでアゴデ…。

ガラガラガラ…ッ
いつでも笑顔でステキな憧れのスッチー
(音を立てて崩れる理想。)


「…す、すみませんでした。」

なぜか陳謝しながら、指定された場所に食器を戻すくぅの目には、一粒の涙が光っていた(とかいなかったとか)。

言い知れぬ虚無感に襲われながら席に戻ってふと思う。きっと、カーテンの向こうでは、あいかわらずスッチーがもぐもぐしているのだろう。

機内は静かだ。平穏なフライトはあいかわらず続いていた。

(余談)
その後はそれなりにステキなフライトを楽しんだくぅだが、実はどのスッチーとも目を合わせられなかったらしい。(あと、人間不信に陥ったとか陥らなかったとか。)


おそらく世界広しといえど、スッチーに顎で使われた唯一の乗客